アメリカ大使によるミッション。
ウィリアム・ハガティ前大使が着任したとき、「大使をもっと日本の方に認知してもらう」というミッションが降りてきました。その前のキャロライン・ケネディ大使と比較してもハガティ大使の日本での認知度は低かったです。(ちなみに今ハガティ大使はアメリカのテネシー州選出の連邦上院議員として活躍されています。連邦の上院議員は非常にハイランクの政治家です)
その当時、広報部におり、テレビ局を主に担当していた私ですが、テレビについてあまり知らず、正直テレビを10年近く持っていないほどでした。それに広報の仕事につくのも初めてでした。アメリカの価値観を一歩的に押し付ける広報はしたくないし、それを日本の方も記者さんも好まないだろうということはわかっていました。
アメリカ大使館というだけで仕事は確かにしやすいです。でも、アメリカ大使館のヒロミさん、ではなく、ヒロミさんだから仕事がしたい言ってくれる広報を目指したい、と決めました。アメリカ大使館という看板に甘えるのは違うと思っていました。
はっきり言って、大使への「政治関係」のインタビューを取るのは難しくありませんでした。でも、政治に興味のない人に大使のことを知ってもらうには、固めの政治インタビューではなく、ソフトな、人柄を出せるような取材にしたい、例えば情報番組やバラエティがいいなと思いました。
そこで、大手メディアの国際部・外信部・外報部のアメリカ大使館担当の記者さんにお茶をしてもらって、テレビ局は何を求めているのか、どんな取材だったらテレビ局的には嬉しいのか、ニュース番組を作る際の視聴者を惹きつける話の作り方など、勉強させてもらいました。
最初にわかったのは大使のソフトなインタビューをとるのは意外と難しいということでした。
最初に聞きに言ったのは赤坂の某キー局の記者さん。過去に同社が大使館とどんな仕事をしたのか、どんなことをしたいかなど、じっくり聞きました。そこで少しテレビ局の事がわかるようになり、とにかくテレビ局、新聞社、通信社問わず、記者さんという先生とランチとお茶のアポを、ほぼ毎日入れて勉強しました。また、各社について書いている本を読み漁り、どんな特徴があるのかを勉強しました。
その後、汐留の某キー局と、ハガティ大使の最初のソフトな取材が実現しました。夕方のニュース番組ではありましたが、大使の公務と父親としての優しい側面をミックスしたものになりました。
そして引き続き、私の記者さんへの逆取材は続き、前述の赤坂の某局に紹介していただき朝の情報番組でクリスマス特集をやってもらったり、さらには渋谷の国際部の方に自分から売り込みに行き、大人気番組のサラメシでアメリカ大使館特集をしていただきました。
その時点でのサラメシの最高視聴率を獲得し、ディレクターのIさんと喜び合いました。
そして、お台場某キー局のOさんとの出会いも欠かせません。Oさんはまさに私の描くテレビマンで、有言実行、そして太っ腹、優しくて謙虚。細かいことは気にしない。いろいろな業界の人が集まる会を随時開催されており、呼んでいただきました。普段の生活じゃ出会えない方達、各方面で大活躍されている方達との出会いは今でも本当に私の宝です。業界が違うけど、何か一緒にしたら面白いよね!という明らかにプラスのエネルギーしかない一晩に参加できるので、できる限り予定を調整して参加していました。
このように、自分を「大使館の窓口」という立ち位置ではなく「大使館とメディアの間に存在する窓口」くらいの場所に自身をおいていると、気軽に連絡をしてくれるようになり、メディアの方々も信頼してくれるようになりました。
記者さん達の知識量、経験、取材力はすごいなと改めて感じます。「フェイクニュース」などの言葉はよく聞きましたが、こんなプロフェッショナルな記者さんたちが研鑽を積み、その情報をシェアして報道してくれているなんて、ありがたいことだと思います。